輪
市川和則
路地裏から抜ける砂利道で
鼓動の打つ音と合わすように踏み出した
昨日見た夢を思い出す
透明な景色に一つだけ青いビル
歪んだスケッチに 手を汚すだけ
このままシーツにくるまっているのもいい
汚れたシャツなら捨ててしまってもいい
昨日と明日が繋がるような 輪
いつもいつも迷う選択肢
空っぽの心は満たされて溢れ出す
自分を知るための公式は
透明の用紙に一つだけ赤い枠
拾った小石で 手を汚すだけ
本当の嘘なら信じてあげてもいい
不安によく似た安心はなくてもいい
知らないふりして箱に詰めた 輪
透明が好きだと一つだけ嘘をつく
飛び交う言葉に頷いているのもいい
気に入った靴なら毎日履くのもいい
冷え切ったスープは温めなくてもいい
一人の時には力を抜いてもいい
週末の課題は週明けに解けばいい
電柱をつたって空にのぼるのもいい
無限を一から始めるような 輪
一から無限を始めるような 輪"