初恋

Kyohei Yamamoto

重なる思ひ 恋の樹の下で
傍らに立つ 君が問う
林檎畑に出来た細道は
誰が踏みそめしかたみぞと

あげ初めし前髪
林檎のもとに見え
前にさした花櫛
君を花のように思ふ

葉擦れの音は碧く
木立の陰に潜み
落葉はやがて 紅く染まり
ふたりふと目を見合わせて

溢れる思ひ 秋の樹の下で
人こひ初めし はじめなり
やさしく白き 君のその肌に
薄紅がよく似合った

伸びた髪を 結い上げて
林檎のもとへゆく
あなたがそこに居ると
なぜかとても嬉しくなる

手にした林檎の実に
思ひの丈を乗せて
このこゝろが届くようにと
そっと あなたに手渡した

溢れる思ひ 秋の樹の下で
きっとあなたに寄りそって
薄紅の恋と呼ぶのなら
林檎のように甘く薫り

かゝったためいきが髪を揺らして
寄りかゝったあなたの傍
重なる鼓動さえ愛おしいと
いたづらのように微笑んで

重なる縁 恋の樹の下を
ふたり寄り添い歩みゆく
林檎畑の恋と呼ぶのなら
進む細道は誰が踏みそめしと
見つめ合うときぞこひしけれ

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