磨き
横山剣
クルマの後部座席に
小さな夏の忘れ物
窓から投げ捨てたけど
この胸にこびりつく未練
不潔なホテルの部屋で
あの夏 お前を抱いた
特別 蒸し暑い夜
心まで脱がせずにいた
青い海 白い波
このやるせない気持ち
もうどうにもならない
「自分の話はやめて
あたしの話を聞いて!」
そんなこと言っていたよな
今なら聞いてやれるのに ...
燃える海 荒れる波
きっと他の誰ひとり
この胸に棲めない
クルマを買い替えたのさ
前より地味なクルマを
こういう引きの美学で
磨くのだ 男の質を
こういう引きの美学で
始めるさ 次の季節を ...