ひとなつの経験
Motohiro Hata
誰もいない 夏の終わり 夕立ち 雨宿り
濡れて 透けそうな本音 はかりあぐねていた
髪を伝い 雫落ちる まさにその刹那に
どちらからともなく 会話 無理矢理 塞いだ
青天の霹靂 越えてく境界線
その一瞬は 何もかも分かり合えた様なフリして
そして ただ 重ね合う 互いを
はやる気持ち 膨れ上がる 積乱雲のようで
けれど 肌に張り付く不安 拭えずにいた
舌先の甘いしびれ 噛んで確かめてみる
惑い 揺れる 視線のわけ 教えてくれよ
ひと夏の経験 つんざくような雷鳴
その一瞬の 閃光に ひどく虚しさがこみ上げて
そして また 見失う 互いを
突然の雨に 必然の雨に打たれて 沈んでゆくんだ
やがて跡形もなく 消えてしまうなら
なぜ 交わるんだろう
青天の霹靂 捨て去る境界線
その一瞬で ためらいも 打算も 燃え尽きるくらいに
今は ただ 重ね合う 互いを