Typhoon
Yumi Matsutoya
風の音で目覚めた夜明けは薄明かり
あなたの肩にかけるシーツ
そっと腕をのばしてラジオをつけましょうか
もうそこまで来たタイフーン
ブラインドのすきまの空は不思議な色
厚い雲が動いてゆくわ
銀色の草も木も妖しくゆれはじめて
もう すぐに外はタイフーン
あの夏の島の苦しい潮の香り
ここへ ここへ ここへ
あなたがお茶を飲んでさよなら云う頃は
この部屋もひどい雨の中
ちっぽけな町じゅうが止まってしまえばいい
今日はどこへも行かせないわ
あの夏の恋の苦しいときめきを
ひとり ひとり ひとり
私の胸の奥に生まれた台風が
シーツの海を吹いてゆくの
哀しくてこわいからあなたを離さないわ
もう すぐに外はタイフーン