飛花
Keina Suda
花は散ってしまった
残るのは僕らを包む陽だまり
穴の空いた心だ
弱い風の中 あなたの瞳は
木陰に隠れて 見失っていた
夏の気配が近づくたび
春が遠のいている
ねえ まだ何一つも返せてはいないのに
あなたの背を目で追うことだけ
どこかで食い違った誓いの言葉も
花の香りと共に散りゆくだけ
雨は遠い過去 幸福愛憎
胸に暮らしてる 馬鹿みたいな心だ
深い夜の底 這いよる甘えに
溺れてしまいそう それもいいかって
あなたの声に触れる度に
僕は恥ずかしくなる
ねえ ただその雫に見惚れてしまうのは
誰よりあなたが恐ろしいから
どこかで分かち合えた互いの痛みは
花の枯れる様にひどく似ていた
色めいていく景色は 二度とは戻らない
全ては等しく木陰へと
限りのある世界じゃ 上手く笑えない
全てを抱えて生きていくだけ
ねえ ほら何か一つ言葉を探すなら
どんな響きに辿り着くでしょう
どこかで傷がついた静かな気配に
今は全て委ねていたいから
ねえ まだ何一つも返せてはいないのに
あなたの背を目で追うことだけ
どこかで食い違った誓いの言葉も
花の香りと共に散りゆくだけ